弁天滝から県道737号線に戻ると、山の中腹に大きな滝が落ちているのが見える。 新鹿町のシンボルとして、小学校・中学校の校歌にも唄われているという龍門滝である。 地元では誰一人知らない者は無い程の有名な滝ではあるが、道は途中から荒れ果てており、近付くのは困難であると聞く。 地図を見れば、県道737号線三つ目のヘアピンカーブ辺りが滝に一番近そうである。 県道を登り目的のカーブの辺りに差しかかると、山道の入口があった。 車を降りて見ると、ガードレールには「龍門山登山道」との小さな看板もかけられている。 ここが龍門滝への入口で間違いないだろう。 山道を進み、堰堤を左の階段を登って越えると、比較的しっかりした踏み跡が谷の左(右岸)についている。 登山道を進み、途中谷を渡ってしばらく歩くと、話に聞いていた通り道はまったく分からなくなってしまった。 遡行できないかと谷を見ると、川床は一枚岩になっており、いわゆる“ナメ床”と呼ばれる状態になっている。 沢靴に履き替え、ナメ床を進む。 ナメ床の上は舗装道路を歩いているようなもので、危険はまったく無いが、谷の上にまで茂っている藪をくぐり抜けるのが厄介である。 しばらくナメ床を歩くと、徐々に大人の頭くらいの大岩が増えてくる。 沢登り用語で言うところの“ゴーロ帯”である。 ゴーロ帯の終点は、10mほどの巨岩でふさがれていたため、ここから藪コギに入ることになる。 藪の中を注意してみると、古い切株が点々とあり、その周囲は比較的通過が容易であるようだ。 軍手をはめた手でイバラを払い、リュックにからみつくツタを引き剥がし、切株から切株へと進んで行く。 入口から50分ほどのところで、谷から少し大きめの水音が聞こえた。 滝の水音にしては少し小さ過ぎる気もするが、静かな斜瀑であれば不思議は無い程の水音である。 水音の方へ向かうと、木々の間から巨大な岩壁が見えた。 落差50mの斜瀑・龍門滝である。 リュックを投げ出して滝の前に腰を降ろし、水しぶきと滝風で涼を取る。 滝の前が2〜3mほどしかなく、50mの全景をカメラに収めるのには骨が折れた。 |