日本の滝百選に選ばれた「七ツ釜の滝」を始め、数々の名瀑がひそむ谷として有名な登山コースである。 しかしながらかなりの秘境の地にあり、毎年必ずと言って良いほど死亡事故も起きている、危険な谷でもある。 そのため入山には登山靴や雨具を始めとした本格的な登山装備が必須で、また行程が長いため、途中で一泊する必要がある。 道中にある「桃ノ木山の家」は一泊7,300円だが、夕食・朝食付きで、また布団もあるので、ここを宿泊に利用すれば寝袋・食料等が不要になり、荷物を大幅に減らすことができる。 登山が初めての方は、ショップで「一泊二日の登山で、布団・二食付きの山小屋を利用します。」と言って、装備について相談すると良いだろう。
登山道に入ると、いきなり岩場を繰り抜いて造った鎖場である。 ここは大日ー(だいにちぐら)と呼ばれる大きな岩場で、谷の左岸全体が岩の塊になっている。 なお、右写真上部の細い溝が登山道である。 鎖場になってはいるが道幅はかなり広く、落下の恐怖はあまり感じられない。 しかし所々水が滴り落ちて滑り易くなっているので、油断は禁物である。 ふと下を覗きこむと、宝石のように美しい水面が見える。 透明度は高く、川底の小石の一つ一つがはっきりと見分けられるほどである。 登山道から3km程で第一の滝・千尋滝(せんぴろたき)に着く。 落差160mの堂々たる大瀑である。
千尋滝からしばらく歩くと、大きな枯れ谷に突き当たる。 この枯れ谷を避けるように、登山道は急な坂道を登り、谷が細くなったところでこれを越え、また降っている。 ここが大杉登山道最大の難所と言えるだろう。 千尋滝から40分ほどで、猪ヶ渕(ししがぶち)に着いた。 水面に写りこんだ紅葉が美しい。 猪ヶ渕の岩と岩の間からニコニコ滝が覗いている。(左下の写真) 猪ヶ渕から登山道の石階段を登って行くと、踊場のような場所に二本の滝が落ちている。(右下の写真) 看板も設置されておらず、大杉渓谷の中では地味な存在と言えるが、落差・水量とも十分な、なかなか良い滝である。
猪ヶ渕から10分ほど歩くと、ニコニコ滝展望台である。 名前に似合わず、二段50mの迫力ある大瀑である。 滝口から流れ出た水が、まるでスローモーションのようにゆっくりと落ちていく光景は、幻想的なまでに美しい。 名瀑ぞろいの大杉谷の滝の中でも、白眉と言って間違いは無い。