伊勢市内の滝(5)


おべおべっ滝

飛滝から県道720号横輪南勢線に戻り、左折して矢持町へ向かう。おべおべっ滝
この矢持町には平家の落人集落の伝説があり、また住民のほとんどが修験者との話である。
下一郷橋を渡ったところの左手に、「鷲嶺(しゅうれい)観音・水穴」の道しるべがある。
左折して集落の間を抜け、林道終点の広場に車を停める。
ここは谷の合流地点になっており、右又沿いの道は鷲嶺水穴へ、左又沿いの道は鷲嶺観音へそれぞれ続いている。
なお、土地の古老に「鷲嶺」の語源を尋ねたところ、本来は「修嶺」即ち修験の山の意であるとの由である。
橋を渡り、左又の左岸に続く踏み跡に入る。おべおべっ滝
右又右岸沿いの鷲嶺水穴への道は良く整備されているが、こちらの道は時折踏み跡が怪しくなるので注意が必要である。
30分ほど歩くと、おべおべっ滝が見えた。
落差3m程の樋状の滑滝である。
このおべおべっ滝には、不思議な伝説があるという。
かつて村人がこの近くを通りかかったところ、「おべ、おべ」との声が聞こえた。
不審に思って声のする方へ近付いてみると、この滝の滝壷辺りに亡霊が立っており、「負べ、負べ」と言っていたという。
恐らくこの辺りで疲労困憊の余り力尽き、亡くなった平家の落人の霊であろう。
「おべ、おべ」との不思議な声は、亡霊が村人に、「私は疲れたから、背中に負ぶさらして里へ連れてってくれ。」と頼んでいたものだったのである。
村人はとっさに履いていた草鞋の鼻緒を切り、滝壷に投げると「この鼻緒を挿げ替えよ。」と叫んだ。
そうして亡霊が草履の鼻緒を挿げ替えている間に、村まで逃げ帰ったとの話である。
(2004年11月28日)


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