このページは私”まるた”、もしくはその友人達の、事故・遭難の記録・分析・体験のコーナーです。と言っても大したものじゃありません。誰でも起こる身近な失敗・過失がほとんどです。ですが山に行ってるなら誰でも起こるこの事が、まかり間違って大事故につながる可能性が、多少なりともあることも事実です。笑える事例がほとんどですが、皆さんの参考になりましたら・・・。


●冬山での泥酔・・・酔っ払って防寒具を燃やしてしまった事件(1995年2月岐阜県高賀山)。
もう7年も前のことですが、会社の連中3人と近くの岐阜美濃の高賀山(標高1224m)に1泊で登った事があります。麓の高賀神社近くの駐車場に車を停め、そこからテント・食料を手分けして担いで、山頂目指しました。山自体は片道夏で1時間半、冬で(雪の状態によるのですが)2時間ぐらいで山頂に登れる手軽な山です。樹林帯に囲まれてるため雪崩の心配なし。谷筋一本尾根一本とルートが分かりやすいため、冬でもルートを間違う事はまずありえない。山頂からは登山口の神社が見えて、その周りは民家が20軒ぐらいある・・・非常に安全、且つ雪山を体験するにはもってこいの初心者向けの山です。
私たちはこの山で「ちゃんこ鍋をしよう!」と計画してました。まあそれはいいんだけど、酒も大量に持ち込んだのが悪かった・・・。その年は結構暖冬で雪が少なく、登山口付近で積雪30cm、尾根道山頂60cmぐらいだった。輪かん履かなくても大丈夫なぐらい。で午前中から登り始め、昼過ぎには山頂、頂上からは奥美濃の山々がきれいで、特に白山が見事でした。
頂上では雲ひとつなく晴れ上がり、Tシャツ一枚でも暑いくらいだった。さっそく雪でテーブル・椅子を作り、そこで鍋をセットしてさっそくちゃんこ始めました。樹氷を見ながら鍋をするなんて最高ですね!
で昼の2時から夕方の6時まで延々と鍋やってたんだけど、だんだん寒くなってくるので、酒の量も増えていく。一番酒に弱い後輩Y谷君がだんだん酩酊して、呂律が回らなくなって来た。「タバコ取って来まーす!」といってはテントに入り、出て来る時登山靴履かずに靴下のまま出てきちゃう。おいおい冷たくないのかよ。雪でぐちゃぐちゃだよ。このままだと凍傷だよ。仕方が無いので靴下脱がして私の予備の靴下を履かせた。酔ってるので手づかみで鍋の白菜取ろうとしたり、タバコを食べようとしたり・・・ええい手間のかかる奴っちゃ!
そうこうしてる間に暗くなったので、「さあ寝よか」とゆうことになり、泥酔してるY谷君をテントの中に放り込む(ホント蹴倒してたな)。「早よ寝袋に入れ!寝ろ!アホ!」と言い、自分のテントに入ろうとした時第一の事件が起こった。
泥酔中のY谷君は意識が朦朧としながらも、「寒いなあ、コンロつけよう」と思い、プリムスのシングルバーナーに火をつけた。
そのコンロが倒れ寝袋が溶け出した。本人は火事になりかけに気付かず、燃えてる寝袋に手をかざして暖めてる。「何か変なニオイするなあ、Kさんタバコ替えた?」「いや・・・あぎゃあ!Y谷君のテントが!」テントが燃えるバーナーで中から赤く照らされた。二人でY谷君のテントに飛び込み、寝袋・コンロを外に放り出し、ついでに本人も放り出した。幸い本人は怪我火傷無し、テントも無事。被害は寝袋だけ。腹が立ったので本人一発どついたが、酔ってるので全然効いて無い。
後始末をした後、第二の事件が起こった。代わりに俺の寝袋にY谷君を詰め込み、目を離すと危険なので俺のテントに放り込んだ。「ああ汗かいた!ちくしょう面倒かけやがって!」と上着脱いで放り投げたら、その先に例のコンロがあった。「ジュウウウ・・・」焦げ臭い臭いと音が・・・。モンベルの2万4000円のドロワット・パーカが、見事腹の部分に30cmの大穴が・・・とほほほ。
その晩マイナス10度に下がった気温の中、シュラフカバーと腹に大穴の開いたパーカで、一晩過ごしました。寒くて全然眠れず。コンロをつければいいのですが、先ほどの事件で怖くて・・・。足の指先しびれてきたぞ・・・ああ俺も芳野満彦さんみたいに切断するのか・・・(たかがマイナス10度でするわけないです。でもその時はそう思い込んでいました、あはは)
翌日の朝、先日の記憶が全く無く、「お早うございます!いい天気ですねー!」と言って体操してたY谷君を二人でボコボコにした。「お前のせいでなあ!凍傷になりかけたんやぞ!」「くらあ!なめとんのかわれ!」ドカッ!ボクッ!ベシッ!
記憶の跳んでる本人は、「やめてください!ボクが何したっていうんですか?あっ痛い!助けて!」お前いっぺんあの世に行って、三途の川で頭冷やして来い!アホタレ!という事件でした。
実際その晩はマジで寒くて死にそうでした。よくシュラフカバーとツェルトのみでビバークしてる人がいるけれど、俺には信じられん!まあ俺は死ぬ事はないと思ってたが、泥酔したY谷君が心配だった。こんな山で急性アルコール中毒になったら・・・考えても恐ろしい事です。しかもよくテントが燃えなかったなあ。テント二張りだったから良かったものの、一張りでしかも燃えてしまったら・・・怖い事です。たかが1000mの雪山でも、条件によっては遭難に繋がります。
教訓「酒の飲みすぎには注意しましょう!」


●冬山での忘れ物・・・テントのポール持って来るの忘れた事件(1996年3月岐阜県大日ヶ岳)
会社の同僚と二人で行ったのですが、午後2時頃山頂に着き、300m下の尾根道の木々の茂った所まで下がって、そこにテント張る予定でした。でテント建てようとしたらポールが無い!ザックの隅から隅探したけど無い!ああどこいったんや!
思い出した!車のトランクにザック入れる際、サイドに突っ込んであったポールが邪魔なので、ザックから外してトランクに入れたんや。出発の際にザックに入れ忘れた・・・ああ俺達ってアホ!「お前が入れ忘れたんだろう!」「人のせいにするな!お前やろ!」とののしりあう事1時間、大喧嘩になりました。(←そんな暇があったら下山しろよ)
時刻は既に午後3時。もう夕方だ。ここで二人で意見が分かれた。「ビバークするか」「下山するか」とまあここでも大喧嘩。 でも結局スコップも小型一本しか持ってきてなかったので、下山する事に。
もと来た「いっぷく平」からひるがの高原に戻る道は約4km。距離がありすぎる。仕方がないので「前大日ヶ岳」から、直接ダイナランドスキー場に下山した。結果的にこのルート選択は正解でした。たった2kmでしたが、スキー場のリフトまで下山したのが夜9時。車を置いた駐車場には夜12時でした。スキー場がナイター営業していたので、道に迷う事はなく、何本かあるリフトの位置関係で、自分達の居場所も完全に把握できました。
もしスキー場がナイター営業してなかったら・・・考えても怖いです。月もでていない星明りもない雪山で、下山ルートがわかるはずありません。元々スキー場の乱開発をボロクソに言ってたのですが、これ以降は言えなくなりました。しかしスキー場のナイターの照明って凄いですね。大日ヶ岳の東斜面数キロ四方がこうこうと照らされて、斜面の木の陰が一本一本きれいに見えました。富士山の夜間登山よりずっと歩きやすかったです。でもこれだけ照明が明るかったら野生動物への影響は・・・アカン、命助けられたのに悪口は言えんわ。
教訓「スキー場は悪ではない」


●入る谷一つ間違えました・・・(1991年三重県池木小屋山)
友人のH井、K下と一緒に一泊二日で池木小屋山に登ろうとして、早朝京都を出発。高見山を越えて昼過ぎには飯高町の香肌峡に着いた。
林道の脇に車を停めて・・・この時谷を一つ間違えた!本来は「宮ノ谷」に入らなければならないのに、600m手前の「江馬小屋谷」に入ってしまった。しかしなんで間違えたんだろう?経験が豊富な人間が二人いるのに・・・。
「ここが林道終点かー」「これが高滝かー!すごいなあ」実際は不動滝だった(笑)。この二つのルートはほぼ同じ距離に林道・その終点・滝があるため、谷に入ってから4時間全く気付かず。だんだん赤テープが無くなり、渓流もルートが取りにくくなってくる。とうとう通行不可能。「おかしいなあ、何で?」と磁石を取り出して見てみると、かすかに針の位置がずれている。今まで何度か磁石を見てたけど、大雑把にしか見なかったので、15度くらいの位置のずれを見落としてた!ルートが無くなって初めて気が付いた。ああなんて馬鹿。
この地点で急遽引き返した。午後5時でした。足元はかなり暗くなって見難くなっている。暗くなる直前で遭難しなくてよかった。結局その日は奈良県側のキャンプ場に泊まり、翌日奈良県側から日帰りで「国見山」の登りました。
今回のルート間違いの原因は、
先ず第一に地図を小まめに確認しなかった事。「たぶんここだろう」という思い込みが、一番の原因。
第二に、「相手(同行者)も知ってるだろう」という思い込みです。お互いに思い込んでたため、確認作業をしなかった。疑わなかった。
第三に、磁石をいい加減にしか見なかったこと。大雑把にしか方角を確認せずにいた事。これは私自身の癖になってしまってた。「赤の針がこっち向いてるからだいたいこの方角だろう」といつもいい加減に見てる。この癖治さんとなあ。
ちなみにこの「宮ノ谷〜池木小屋山ルート」は上級者向けですが、むちゃキレイです。特に途中の高滝は圧巻!ぜひ皆さんも挑戦してください。
教訓「じっくり見ろ!」


●盗難事件・・・山小屋でストック盗まれました(1995年9月涸沢ヒュッテ)
友人4人と紅葉を見に奥穂に行ったのですが、いつもはテントなんですが、「今回は山小屋で楽しよう!」って意見が出たので、涸沢ヒュッテに初めて泊まりました。TVの取材も来てて、平日ながらも結構人が多かったです。この時の夕飯の模様はフジTVで放映されたそうですが、残念ながら私は写ってない!ああ残念!(嫁さんは「写らんで良かった」と言ってた)
翌日はザイデングラートから奥穂山頂、泊まりは穂高岳山荘の予定だったため、ゆっくりと朝9時に出発・・・と思ったら、無い!俺のエバニューの山スキー用ストックが無い!盗まれた!2ヶ月前に超ド派手な3段ストックを買ったんだけど、あまりにも派手なので、かえって誰も盗らないと思ったんだが・・・。ああショック!
ヒュッテの人にも話して探してもらったんですが、やっぱりありませんでした。ヒュッテの人によると、「これから登る人はバレる恐れがあるので多分盗らないだろう、盗るなら下山する人だ、追いかけますか?」と言われた。でもそのために今回の山行きを諦めるなんて・・・3600円なので泣く泣く諦めました。犬にかまれたと思って忘れよう・・・ぐすん。
山小屋のお兄ちゃんとも話したのですが、やはり盗難はよくあるそうです。実際現金クレジットカード貴重品の類はフロントでも預かるそうです。よく盗まれるのが登山靴で、これって間違えて履いていくのがほとんど。でも間違えらえれた方はたまったもんじゃない。間違えられないためにも、登山靴は必ず両方を紐で結び付けておく・・・そして目印を付けておく。登山靴の盗難が多いと言ってもほとんどが間違いですが、次に一番多いのがカメラで、これは100%盗難でしょう。これが実に多い。
登山靴の盗難対策では、先輩のKさんは靴のべろと紐が交差してる間に、名刺を挟んで置くそうです。これだと間違えられない。Y君は専用の赤い細引き20cmでぐるぐる巻きにしておくとの事。M君は山小屋に入る直前に靴をドロでぐちょぐちょに汚しておく。これだと絶対間違えられない、というより汚くて触られない。なるほどドロはいい手だなあ。でも山小屋からは嫌われるぞ(笑)。
「山には悪い人はいない」というのは大嘘です。下界と同じ。いい人もいれば悪い人もいる。ただ下界に比べ圧倒的にいい人が多いというだけ。「自分の身・荷物は自分で守る」ってのは、どこでも原則ですね。ストックを手軽に置いた私がアホウでした。
しかし腹立つなあ。見つけたらボコにしたる!
教訓「人間の本性これ悪なり!」(←詳しくは「波切日記3月27日」を読んでね)


●ルート間違い・・・しょっちゅうやってます。
これだけはいつでもやってます。ホント数え切れないくらい。代表的なもの幾つか紹介しましょう。

〇1993年9月八ヶ岳(東・西天狗岳、根石岳)
会社の後輩N沢と1泊2日で行きました。雨なので初日は本沢温泉にキャンプ。霧の中かすかに見える硫黄岳を肴に、日本で二番目に高い場所にある露天風呂に浸かりながら、ビール飲んでました。旨かったよー!
翌日雨が止んだので、朝7時半にキャンプを出て、白砂新道をどんどん登って行った。天候は曇りで、非常に濃い霧が発生してて、10m先が見えないくらい。でも良く知られた登山道なので、あまり注意せず登ってました。
15分ほどで涸れ沢に出会い,どんどん上がっていく。本来ならしばらくして沢を離れていく道があるのだが、この時はその道の気が付かず、そのままどんどん沢を登って行った。沢は涸れていて石や樹木が全然無く、登山道と勘違いしてました。30分登って沢が終わりルートが無くなる。「あれえ?おかしいなあ?」と気が付いた時は、周囲は霧で、2m先が見えないほどでした。「いかん!沢と登山道を間違えた!」と気付いて、大急ぎで戻ろうとしたんだけど、霧がどんどん濃くなって、足元も見えないくらいになってしまった。大急ぎで荷物から細引き10mを取り出し、N沢君と腰のベルト同士で結び合う。この霧ではぐれないようにだ。で慎重に沢跡を探しながら、つまずかないようゆっくりと降りて行った。元の迷った地点に帰り着いたのは2時間後だった。結局昼から晴れてきたので午後に再度登りました。
よく知られてるルートでも、ほんの些細な事・・・濃霧や沢との間違いなどで、簡単にコースから離れてしまう事があるんですね。今回は朝の出来事だったので、比較的簡単に元に戻れたんだけど、これが雪山や午後の遅くだったら・・・。

〇2002年1月23日牛草山
つい最近のルート間違いです。しかも南勢町の牛草山。「なんでこんな所で迷ってしまうねん!」と言われても、迷ってしまったんですよ、あはは!私の不注意だ。
このホームページを作成するために、何年か振りに牛草山の登ったんだけど、沢最終地点近くの「一休み」という小さな看板がある所で、ここでしこたまビールを飲んでしまった・・・ああこれがいけなかった!一休みでロング缶2本開けてしまった。この場所から沢沿いに赤テープが続いている。その赤テープに引かれて直登してしまいました。「なんでそっちのほうに行くの?ここの登山道はわかりやすいやん!」と言われるのもごもっとも。私が酔っ払ってたのがいけないんです。ぐすん、すいませんすいません・・・最近家であんまし飲ましてくれないので・・・つい量が過ぎてしまった。
この直登コースはむちゃくちゃえらかったです。詳しくは「牛草山」の地図を見てください。赤テープが所々にしかなく、見落とす事必至!木に囲まれて展望は効かず!自分がどこ歩いてるのか全くわかりませんでした。磁石と2万5000分の1の地図を持っていってよかったー!薮と低木が物凄くて、服ビリビリ手足傷だらけ。斜面は急で落ち葉が厚くて足すべりまくり、木を掴みながら登ってました。とんでもないコースでした。
この直登コースは「続・ひと味違う名古屋からの山旅」七賢出版 にも載ってます。ただ山頂下の下山口が違うみたいです。
教訓「酒の・・・以下略」俺って進歩無いなあ。


●落雷・・・目の前に落ちました(1996年7月南木曽岳)
「バイクでツーリングして登山しよう!」と思い立ち、後輩Y谷君を誘って、朝早くから長野県の最南端の南木曽岳に行きました。愛知県の江南から犬山に出て、国道19号を土岐、瑞浪とツーリング。夏なので暑かったのですが、山間の国道は緑がきれいでした。特に恵那山が美しかった!中津川から中央アルプス・南木曽岳に入るんだけど、高原地帯なので涼しい。トンネルなんかに入るたびにヒヤッとする。夏の山間のツーリングはこれがいいんだな。
南木曽キャンプ場より3km奥の自然公園にバイクを停めて、ここから3時間の登山。行きのルートと帰りのルートは違うので、大変変化があって面白い。行きは岩場・鎖場があって迫力満点!頂上は景色が良く、なんと御岳がド迫力!帰りは杉林の中をゆっくり帰るコースです。どんどん杉林の中を進むにつれて、ピーカンの天気がにわかに・・・雲がどんどん厚くなってくる。もうすぐ自然公園だ、という所で突然大雨が・・・しかも雷雲らしく雷が!稲光と音がほとんど同時!いかん雷雲の中にいる。耳をつんざくほどの音が立て続けに数十回、Y谷君と耳元で大声で話しても聞こえない!凄い音だ!静電気発生しまくり!髪の毛が逆立った!危ない!来るぞ!二人で荷物放り出して地面に伏せた。目の前が白い稲光で眩んでしまった。落ちた!その後も10回ぐらいとてつもない音の雷が近くに落ちた。怖くて怖くて二人ともドロだらけになったまま、地面に寝転んでました。10分ぐらいしてようやく音と光が遠ざかっていった。ああ良かった助かった。
顔を上げ回りを見渡すと・・・どっひー!目の前の直径30cmぐらいの杉の木が、高さ5m位の所でへし折れてる!真っ黒に焦げた部分と生木がむき出しになった部分が・・・こわー! 歩いてるうちに落雷でへし折れたり、真っ二つに割れた木を次々と発見。よくもまあ俺達に落ちなかったもんだ。いつ死んでてもおかしくない。恥ずかしい話だが、あまりの怖さにおしっこちびってしまった。いやちびったと言うより漏らしたが正しいな。肝も冷えたがチンも冷えた(笑)。
帰りは南木曽温泉で暖まって蕎麦喰って帰りました。もちろん温泉で(内緒で)パンツ洗濯して、ヘアドライヤーで乾かした。しかしヘアドライアーではパンツは乾かんねえ。キレイになったけど湿ったパンツ履いて帰りました。気持ち悪かったよー!
皆さん機会があったら行ってみて下さい。あまり人に知られてない山です。しかも温泉付き!